経営において、一方通行の情報で判断すると間違った決断をする可能性が高いです。
本記事では、実際に相談があった製造加工業の会社さんのエピソードをもとに、経営に必要な2つの視点について解説します。
今回の相談事例
この会社さんは売上構成の100%が下請けだったので、取引先に売上が左右される状況でした。現に2年前、突然一番大きな取引先から取引解消を告げられたのです。
こちらが悪いわけでもないのに一気に売上減少。その穴を埋めようと既存取引先や新規開拓などでなんとか持ちこたえたそうです。
しかし今も、取引先に依存していて売上は頭打ちの状態は変わっていないので、安定売上が確保できる「自社製品の開発」が課題でした。
とくに小さな製造業では、同じような課題を抱えている人も多いと思います。
この会社さんも、
- 自社製品の開発はしたい……
- 頭では分かっているが、目の前の仕事に追われるばかりで何も変わっていない……
と焦っていました。
売上確保のための分析方法
そのような焦りの中、「自社製品の開発をいかに進めるか」や「2~3年後の設備更新を見据えてあといくら売上が必要か」などを分析していくと、思いもよらなかったところに問題が浮かび上がりました。
それは、結論からいうと一番の課題は「自社製品の開発」ではなく「設備の稼働回数を増やす」ことでした。
分析をしていく中、今の人手と設備でいくらの売上確保がMAXなのか?を1ステップずつ分解してみます。
- 設備の稼働時間
- 設備の稼働可能回数
- 稼働1回分の売上単価
上記のように段階的に数値化していくと、実は、売上が頭打ちな原因は「受注が少ないから」ではなく「生産能力が低いから」でした。
しかも、生産能力が低い原因は、設備の前工程である「人手による製品加工の生産性」に一番の問題があることが分かりました。
つまり、作業時間が少ないから売上も少ないということです。
こうして聞くと「そうだろう」と誰でも気づきそうなことですが、いざ現場に立ってると見えなくなるんですよね。
なぜなら、夜遅くまで仕事をしているし目の前に仕事はあるしサボっているわけでもないし、自分なりにがんばっているから……。
この気持ち、ものすごくわかります!
少人数だと、現場の視点でモノゴトを見てしまい、経営の視点で見られなくなることが少なくありません。
経営視点で売上安定につながる流れ
分析によって、本当の課題が分かれば先が見えます。あとは、具体的な行動として、目標設定を売上金額ではなく設備の稼働回数に変更し、毎月の不足分を見える化することで、仕事量をコントロールする。こうすることで、以下のような理想的な流れで売上安定につながります。
- 生産能力がアップ
- クオリティが高いという強みに磨きがかかる
- 他社と差別化できる
- 選ばれる存在になる
- 取引先と強固な関係をきずける
- 売上安定につながる
下請けでも選ばれる存在になることで、単価交渉も有利に進める日がくるはずです。
もし、課題だと思っていた自社製品の開発を進めようとしていたら、時間もお金も労力もかかります。それに目標の売上金額を達成するにも時間はかかっていたことでしょう。
正しい経営視点をもつには「決算書」が必要
戦略は、「正しい現状把握」をすることで次の一手が見えてきます。その現状把握にかかせないのが決算書です。
決算書は数字を通してメッセージを届けてくれています。自分視点からの現状と数字視点からの現状では、ちがった景色が見えることも少なくありません。
だからこそ、一方からの視点ではなく両方の視点を持つことで「正しい現状把握」ができます。
もし、「決算書からのメッセージなんて読めない!」とお悩みなら、ぜひお気軽にご相談ください。
戦略迷子から抜け出すための具体的な考え方と、すぐに行動できる改善策をご提案します。