個人事業から法人成りしたら、生命保険って入った方がいいのかな?
よくこのような相談を受けるのですが、
本記事では、失敗しない保険の入り方と実際にあった保険営業マンのセールストークについて解説していきます。
保険営業マンからの提案事例
先日、相談に来られたのはご夫婦で弁護士事務所を経営されているAさん。法人成りした時に担当の保険屋さんとこのようなやり取りがありました。
- 保険屋さん:
-
法人成り、おめでとうございます。
法人化したという事は、Aさんは役員になられたのですか? - Aさん:
-
はい。役員になりました。
- 保険屋さん:
-
そうなのですね。
役員の多くの方は法人保険に加入しているのですが、Aさんは必要ないですか? - Aさん:
-
法人保険なんてあるんですね?
どんな保険ですか? - 保険屋さん:
-
Aさんに万一があった時、会社に死亡保険金が入ります。
もし万一がなければ、退職金として使うこともできます。 - Aさん:
-
へえ~、そんな保険があるんですね。
少し考えてみてもいいですか? - 保険屋さん:
-
もちろんです。また連絡します。
こんな風に提案されたんだけど、役員になったら保険に入った方がいいの?
「こんな風に提案されたんだけど、役員になったら保険に入った方がいいの?」と相談を受けたのですが、あなたは法人成りしたら保険は必要だと思いますか?
保険が必要か判断するための3つの質問
まずは「そもそも」を確認するため3つの質問をしました。
- ① もしMさんが突然亡くなったら、会社は存続しますか?
-
もちろんです。
- ② もしMさんがいなくなったら、会社の売上は落ちますか?
-
うーん。
私以外にも何人か弁護士がいるので、ほとんど売上は変わらないと思います。 - ③ 弁護士法人の株式をMさんは持っていますか?
-
いいえ。
会社の株はたぶん夫が持っているんじゃないかな~
あまりよく分かってないです^^;
この質問で分かったことは、以下の2つです。
1)Mさんに万一があっても
会社は存続し売上の変動は小さいということ
2)Mさんに万一があっても
自社株の相続は発生しないということ
上記より、「法人としてMさんの死亡保険は必要ない」というのが、私の答えです。
正しい保険の入り方
保険は、そもそもリスクを減らすためのものです。
役員が亡くなった時の、会社のリスクは大きく2つあります。
売上が急減少する
↓
資金繰りがきつくなるリスク
役員が持つ自社株が相続の対象
↓
多額の相続税発生のリスク
この2つが役員が亡くなった時のリスクです。
そして、そのリスクの大きさによって、以下を決めるのが正しい保険の入り方です。
しかし、間違った入り方をしている会社さんも多いんです……。
- 急に利益が上がり節税できると提案され保険に慌てて入った
- 売上が下がった今、大きな保険料の支払いで資金繰りがキツイ
- 今解約したら損するから払うしかない……
- 資金繰りがキツイから銀行にお金を借りにいく
- 利益が少なく銀行からの評価も低いから、金利が高く設定される
- 支払い利息 > 保険で節税できる税金
この悪循環に陥っている会社さんが少なくないです。
こうなる要因は、「いくら節税できる?」と言うような1つの視点だけで決めてしまったことです。
保険を考えるうえでは、
「うちにはどんなリスクがある?」
「保険商品以外でカバーできるものはある?」
「その保険料で資金繰りは大丈夫?」
といった多角的な視点が必要です。
でも、それが難しいんですよね。
保険営業マンのウラ側まとめ
本来は、決算書から算出して設計するのが保険屋さんの役割なのですが、正直それができる保険屋さんは日本で1%程度です……。
さっきの悪循環に陥った会社さんみんなに、「保険を提案する前に『決算書を見せて欲しい』と言われましたか?」と聞きました。
すると、「はい」と答えた人は0人。日本で1%だから当然ですよね。
それに、決算書から読み取って根拠のある提案をするには、手間と時間がかかるから、できるけどやらない人も多い……。
保険種類によっては、1つの契約で300万円の販売手数料が営業マンに入ったりしますからね。
1つでも多く提案したい営業マンだと、手間のかかることなんてやってられないんです……。
そのため、自分で自分の身を守るためにも、誰から保険に入るのかがとっても重要です。
ただし、「社長が決算書を読める」「第3者からアドバイスがもらえる」
という場合は、保険担当者が決算書を読めなくても大丈夫です。
保険は大きな買い物です。
「知り合いから頼まれて、払えるからそれでいいや」ではなく、
など、さまざまな視点で考えて納得できる保険に、大事なお金を払ってくださいね。