資金繰りを改善する逆転の発想

利益率は上がったのに、なんでいつも資金繰りがギリギリなんだろう…

こんなお悩みありませんか?

本記事では、「率」より「額」を重視した財務改善の方法について解説していきます。

「粗利率の改善=資金繰り改善」ではない

「いつも資金繰りがギリギリ…」と相談に来られた会社さんは、主力商品が2つ、社員3名の小さな会社です。

コロナ以降、売上鈍化が続いていたものの、商品の値上げやついで買いを誘う声かけなど「客単価のアップ」により、コロナ前より粗利率はよくなっていました。

粗利率とは

粗利益 ÷ 売上高 × 100
※粗利益=売上高 – 原価(仕入や外注費)


主力商品であるAとBの粗利率を分析すると、このようになっていました。

A:52%

B:15%

この場合、どちらの商品をより多く販売したいですか?


そりゃあ、粗利率の高いAに決まってますよね。

この会社さんも細かい粗利率までは把握していなかったものの、Aの売上を伸ばすための対策を打ってきました。

ところが、過去実績を売上高の方程式で分析すると、Aの売上はコロナ前からほとんど変わっていなかったのです。

売上高の方程式

売上高 = 客単価 × 客数

客数はコロナの影響により減っていたものの、客単価アップにより売上高を維持していたんですね。

「客数に比例する原価(仕入や外注費)が減って、売上高は同じ」その結果、粗利率は改善されていました。

それなのに、資金繰りは苦しいままだったんです。

どうしてだと思いますか?



実はこの会社にとっての一番の原因は、商品Bの売上低下だったんです。

『額』の見落としが原因

商品Bは、粗利率が15%と低くく利益が少ないので、多くの人はこのように考えます。

同じ人員、同じ時間働くんだったら、粗利率が高い商品Aを売った方がいい。

この考えは間違いではないです。しかし、見落としているものもあるんです。

それが『粗利額』です。

たとえば、2つの商品の販売実績がこのような場合


商品A、Bの販売実績

商品A:単価 10万円、販売数量 50、粗利率 50% 

商品B:単価 300万円、販売数量 10、粗利率 15%

そして、各々の粗利額は

商品A
 10万円 × 50 = 売上高 500万円
 500万円 × 50% = 粗利額 250万円

商品B
 300万円 × 10 = 売上高 3,000万円
 3,000万円 × 15% = 粗利額 450万円

上記のケースで、AとBどちらか一方の販売数量を20%アップしたらどうなるでしょう?

Aの販売数量をふやした場合

粗利率の高いAの数量を20%アップすると、販売数量は 50 → 60 に増えます。

すると利益額はこのようになります。

単価10万円 × 数量60 = 売上高 600万円

600万円 × 粗利率50% = 粗利額 300万円

商品Aの販売数量を20%アップすると、粗利額は250万円 → 300万円50万円増えます!

Bの販売数量をふやした場合

では、粗利率の低いBの数量を20%アップすると、どうなるでしょうか?

販売数量は 10 → 12 になります。

すると利益額はこのようになります。

単価300万円 × 数量12 = 売上高 3,600万円

3,600万円 × 粗利率15% = 粗利額 540万円

なんと商品Bの販売数量を20%アップすると、粗利額は450万円 → 540万円90万円増えるんです!



AとBどちらか一方の販売数量を20%ふやすんだったら、実は粗利率の低いBの方が増える利益の金額は大きかったんです。

しかも増やす数量は「商品Aは10」だけど「商品Bは2」でいいんです。


このように『率』ばかりに気を取られてしまうと、経営のかじ取りを間違ってしまうことがあります。

だからといって『額』だけを気にすればよいかというと、そんな訳ではありません。

小さな会社は人員、時間、お金などの経営資源は限られています。

そんな限られた条件の中で効率的な改善を行うために「率」と「額」をつかった舵取りが必要なんです。

経営をかじ取りするためのブロック図

「率」と「額」をうまく使うためには、利益が見える化されるブロック図がオススメです。

先ほどの事例をブロック図にしたのがこちらです。利益率や利益額が一目で分かりますよね。

このブロック図をつかって、単価・原価率・数量を変化させることで「どのような改善が、一番近道なのか」をカンタンに導き出すことができます。

例えば、先ほどの商品Aと商品Bの販売数量を20%アップした場合のブロック図はこちら

商品Aの販売数量を20%アップした場合

商品Bの販売数量を20%アップした場合

商品Bの数量をふやした方が、粗利額が大きくなるのが一目瞭然です。

もちろん、数字と現実がまったく同じになるなんて事はありません。しかし、少なからず方向性は示してくれます。

まとめ

きっと多くの経営者は、長年の経験上、ブロック図が導き出す方向性をなんとなく分かっているものです。

事例の会社さんも「商品Bを売らないと改善できない」という結果は、なんとなく分かっていました。

それでも、商品Bの販売数量をふやすと

  • 運転資金がもっと必要になる
  • 価格が高いから売りにくい
  • 手間がふえる

など、避けたくなるような事があったので、売りやすい商品Aを売ってなんとか乗り切ろうと頑張っていました。

しかし、現状を数字で見える化したことで「今まで避けてきた結果だ」と納得し、覚悟を決めかじ取りの方向転換を決断しました。

こうなると結果は必然的についてきます。

「引き寄せの法則」にあるように、意識が変われば結果は必ず変わりますからね。

私もそれを信じてサポートをしていきます!
この会社さんの変化が楽しみです。