大混乱の「定額減税」、こんな人は要注意!!

大混乱の「定額減税」こんな人は要注意

先週、こんな相談がありました。

定額減税の書類が届いたけど、どうしたらいいのかまったく分からない……」

きっと、多くの人が同じように悩んでいるかと思います(^^;)

本記事では、6月からスタートする「定額減税」を解説していきますね。

定額減税とは?

まずカンタンに定額減税を説明すると、国民一人あたり

  • 所得税 3万円
  • 住民税 1万円

合計4万円を減税します、という制度です。

” 一人あたり ” なので、家族のいる人は世帯で計算します。

たとえば、このような4人家族の場合

  • パートの妻
  • 子ども2人
    ※妻と子どもは夫の扶養者

夫の対象となる定額減税の計算では、「夫+扶養者3人=合計4人分」になります。

所得税

3万円 × 4人 = 12万円

住民税

1万円 × 4人 = 4万円

世帯では所得税と住民税を合わせて合計16万円が夫の給与から減税されます。

では、どうやって減税されるのかと言うと、今年の6月から少しずつ減税されます。

お金に関するお悩み解決

ただ……、これがもうぐっちゃぐちゃです(笑)


この複雑な定額減税をできるだけシンプルに説明するため、以下のケースで考えてみます。

サンプルケース

家族構成

  • 会社経営者の夫
  • パートの妻
  • 小学生2人

夫の役員報酬

月額40万円

所得税の定額減税

まずは、所得税の定額減税から見ていきます。給与明細で説明すると所得税減税の対象は以下の赤枠の金額になります。

「所得税の定額減税」の対象

所得税は本来なら令和6年6月に天引きされる所得税8,000円を「天引きしない」というカタチで減税します。

ただし、夫の所得税の減税額は「3万円 × 4人分=12万円」なので、令和6年6月だけでは引ききれないですよね。

だから、7月以降も「毎月天引きしない」という方法で減税します。

所得税の減税額



やっかいなのが、12月までに引ききれなかった分があるときです。

上の図のように12月の時点で減税できる金額が7.2万円残っている場合は、いつもの年末調整と一緒に12月の給与で戻します(還付します)


そして、もっとやっかいなのが年末調整をしても減税分が残る場合です。

この場合は、「残った金額を調整給付金」というカタチで支給します。
調整給付金はこちらの記事参照:知らないと大損!調整給付金のカラクリとは?

「そんなんやったら、最初っから全額支給してやぁ~」って、ツッコミたくなりますね(笑)

ちなみに、わが家は最後のパターンです。

と言うのも、定額減税の前に、住宅ローン控除で所得税を全額還付しているので、すでに所得税は0円なんです。

なので、減税の恩恵タイミングはみんなと違うのかな~と(^^;)

ここまでが、所得税のハナシです。

住民税の定額減税

住民税も同じような方法かと思いきや……、まったく違うんです(T_T)

所得税と同じように給与明細で説明すると、住民税減税の対象は以下の赤枠の金額になります。

本来は、今年6月~来年5月まで、月17,000円が住民税として天引き(特別徴収)されます。

年間の金額でいうと、「月17,000円 × 12ヶ月 = 204,000円」ですね。


住民税の減税のやり方は、この金額から定額減税分を差し引くことになるんです。

家族4人の住民税の減税額は

1万円 × 4人分 = 4万円

なので、定額減税後の住民税は

通常 204,000円 ー 減税額 40,000円 = 164,000円

になります。

そして、ややこしいのが給与天引きのやり方です(^^;)


通常は12ヶ月で割った金額を毎月天引きするんですが、令和6年の6月だけは一切天引きしないんです。

なぜか、令和6年7月~令和7年5月の11ヶ月間で天引きするんですね。

天引きする金額は、このようになります。

定額減税後の住民税164,000円 ÷ 11ヶ月 = 月額14,900円


分かりやすいようにと図を作ってみたんですが、もうココまで来るとまったく頭に入ってこないですね(T_T)

とりあえず、、、令和6年6月の給与明細はこのようになります!笑



そして、令和6年7月~11月はこうなります!!笑


そして、令和6年12月は他の控除(生命保険料控除や住宅ローン控除など)とゴチャマゼになるので、いくらが戻ってくるのかは分かりません(笑)

こんな人は要注意!!

ここまで話してきた定額減税ですが、以下のような立場の人はやり方が全く違うので要注意です!

  1. 年収2,000万円超の人
  2. 給与や家賃収入などの合計所得金額が1,805万円超の人
  3. 年金+給与をもらっている人
  4. 個人事業主の人

年収2,000万円超の人
② 給与や家賃収入などの合計所得金額が1,805万円超の人

①と②の人は、そもそも定額減税の対象外です。

しかし、なぜか一旦毎月の給与で減税されます。そして、12月の年末調整で増税されるんです。
減税されて増税されて、プラスマイナス0という調整になります。

何だかモヤっとしますよね(^^;)

年金+給与をもらっている人

このような人は、毎月の給与と年金からなぜか二重で減税されます。そして、年末調整や確定申告で増税されるんです。

まぁ、増税というより、二重で減税してしまったから片方の分を返還する(国に戻す)ということですが…

それにしても何だかモヤっとしますよね(^^;)

個人事業主の人

個人事業主はそもそも” 給与 “という概念がないので、減税は来年の確定申告で手続きをします。

だから恩恵を受けるのはしばらく先なんですね……

話題がもう過ぎ去ったあとに、減税されるイメージです(^^;)



た・だ・し

予定納税をしている人(所得税15万円以上の人)は、令和6年7月の納税額から1人あたり3万円を引けるので、恩恵を早く受けることができますよ^ ^

ちなみに、専従者給与の金額が年間103万円超の妻(配偶者)は、冒頭の所得税の減税方法になりますからね。

でも実際に、妻の口座に給与を振込している人は少ないと思うので、あくまで帳簿上だけの計算ですが(^^;)

まとめ

ここまで見てきたように、1人1人ちがう減税のやり方……

給与計算をする現場は、カ・ク・ジ・ツに大混乱します。

政府が決めた定額減税の目的は、「急速な物価上昇に対して国民の可処分所得を増やすため」とありますが、こんなやり方で本当に効果があるのかギモンです(^^;)

6月以降、残業になるであろう社労士のタマゴの夫は、「現場の苦労をまったく考えていない思いつき減税やー!!」
と声を荒げていました(笑)



あなたの会社でも、

  • 経理担当者の残業代
  • 顧問社労士への報酬
  • 減税分だけ増える給与の支払額

など負担が多くなるかもしれない今年、

例年以上に現金が出ていく可能性があるため、キャッシュの準備をしておいてくださいね!!